前回からだいぶ日が経ってしまいましたが、引き続き医療計画について確認していきましょう。
医療計画に記載する内容は、厚生労働省からの基本方針に沿って決められるので、項目はだいたいどの都道府県でも同じですが、当然ながら中身は地域ごとに違っています。
今回は、D&Mカンパニーの本社がある大阪府の医療計画を例に見ていきたいと思います。
医療計画は、各都道府県のホームページで確認することができ、大阪府はこちらのページから、概要版、全文、各章・各節ごとの個別ファイルが、WordやPDFなどの形式でダウンロードすることができます。
第8次大阪府医療計画の全文PDFファイルは642ページあります。
目次は以下のとおりです。
前回ご説明した「医療計画作成指針」で示されている12項目の内容が、この中にまとめられています。
尚、第7章に「5疾病5事業」とありますが、医療計画の指針で示されてる項目は「5疾病・6事業」です。
大阪府には全ての市町村に一般診療所が開設されており、へき地がないため、指針で示されている「へき地の医療」を除いた5事業のみとなっています。
また、第9章で確保と資質の向上が計画される「保健医療従事者」のうち、医師については「大阪府医師確保計画」が別冊として作成されています。
目次レベルで第7次医療計画から変わっている部分は、第5章の「外来医療にかかる医療提供体制 (大阪府外来医療計画)」が追加されていることと、第7次では「5疾病4事業」だったところ、医療計画作成指針で項目が追加された「感染症(新興感染症発生・まん延時における医療)」により「5疾病5事業」となっている点です。
医療計画に含めなければならない「基準病床数」とは何でしょうか。
大阪府医療計画には「基準病床数は、病院及び診療所の病床の適正配置・過剰な病床数を抑制することを目的に、医療圏ごとの病床整備の基準として、医療法に基づき、病床の種類ごとに定めるものです。」とあります。
つまり基準病床数とは、その地域でそれだけあれば十分とされる病床数のことです。
更に、基準病床数は「国の定める算定方法で定めるもの」であり、既存病床数(現時点で実際に利用できる病床の数)が基準病床数を超える地域では、病院や有床診療所の開設、増床等は原則できないことになっています。
少し話がそれますが、地域医療構想の回で出てきた「必要病床数」と基準病床数とは何が違うのかという疑問がわきませんか。
その2つの病床数の関係性についてはこちらの資料に記載があります。
これによると「基準病床数は現時点において必要とされる病床数であるのに対し、地域医療構想においては、医療需要の変化に応じた将来(2025年)における病床の必要量(必要病床数)を定めている」とのことです。
要するに「必要病床数」は2025年限定のもののようですが、この2種類の病床数は単に名称が違うのではなく、目的や算出方法、算出に利用しているデータが異なるので、必ずしも一致するものではありません。
先程の資料は2016(平成28)年7月のものですが、「これら(基準病床数と必要病床数)の関係について整理が必要」と書かれていますし、第8次医療計画期間中には2025年を迎えるので、第8次医療計画における基準病床数は、既に策定されている「必要病床数」との整合性を考慮した上で算定されているようです。
そういった事情も踏まえつつ、改めて大阪府の基準病床数(二次医療圏ごとの一般病床及び療養病床の合計)を確認してみますと、 69,827床となっています。
これに対して2023(令和5)年6月30日時点の既存病床数は85,952床であり、大阪府では現時点で必要な病床数を上回る病床があることがわかります。
前述のとおり大阪府の第8次医療計画の全文はPDFで642ページありますし、他の都道府県のものもそれなりのボリュームがありますので、全て読もうとするとなかなか大変だと思います。
ですが医療機関の経営者の方たちにとっては、その地域の実情と求められていることを知ったうえで、事業を行っていくことが大切です。
公益性の高い医療サービスを提供し、都道府県からの支援を受けながら地域社会に貢献していくためにも、医療計画を読んでみてはいかがでしょうか。