6月7日に開催された経済財政諮問会議にて、「経済財政運営と改革の基本方針 2023(仮称)」が示されました。
それには、「現役世代の消費活性化による成長と分配の好循環を実現していくためには、医療・介護等の不断の改革により、ワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要」とあります。
保険料の負担が増えることを抑えてもらえるなら一国民として喜ばしいことですが、そのための「医療・介護等の不断の改革」とはどのようなものでしょうか。
今回は「骨太方針2023(原案)」における、医療・介護サービスに関わる内容について見ていきたいと思います。
冒頭でご紹介した記載は、原案「第4章 中長期の経済財政運営」の「2.持続可能な社会保障制度の構築」の中にあり、主にこの部分で医療・介護サービスに関することが書かれています。
これからも続く超高齢社会において、質の高い医療・介護サービスを必要に応じて受けることのできる体制を確保するためには、下記を早期に進める必要があると明示されています。
そのために国が取り組んでいく事柄が様々述べられており、それには医療機関や介護事業者、薬局などの対応が必要になることが多くあります。
中でも多くの医療機関に関わりのあるものとして、次の事が挙げられます。
この3点について、具体的にはどのような対応が必要なのか確認していきます。
昨年10月19日に厚生労働省によって設置、初会合が開催された「医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会」において議論され、まとめられた報告書によると、原則としてすべての医療法人に「経営状況の詳細」なデータ提出が義務付けられました。
このデータベースを活用して、国が「医療機関の経営支援」や「医療政策の企画・立案」行っていくことに加えて、国民に対しても「医療機関の経営状況」を統計情報として公表するとしています。
提出するデータの項目は、医業収益、材料費、給与費、委託費(給食委託費)、設備関係費、経費などです。
提出の義務化は、「医療法人が対応可能な範囲の情報となるよう医療法人の負担への配慮が必要」としつつも、補助金の創設や診療報酬改定などの政策活用を考えると、より詳細な経営情報を収集することが望まれています。
このデータベースは2023年度までに構築し、その後、可能な範囲で早期の利活用開始を目指しています。
健康保険証とマイナンバーカードを一体化し、これまで使用していた紙やプラスチックの健康保険証を原則廃止することを、昨年10月13日に政府が発表しました。
すでに今年4月から、医療機関・薬局に対してマイナンバーカードによるオンライン資格確認の導入が原則義務化されていますが、やむを得ない事情がある医療機関・薬局については、期限付きの経過措置が設けられています。
厚生労働省の資料によると、オンライン資格確認の導入により、窓口での保険証入力の手間が減るなど、事務コストの削減と、患者の診療、薬剤情報、特定健診等の情報を閲覧できることでより良い医療の提供が可能になるとのことです。
補助金による導入支援があるとは言え、IT環境が整備されていない施設にとっては導入費用が高額になる可能性もありますし、現場のスタッフにとっても業務の手順に変化があるため導入時は負担が増えるかもしれません。
健康保険証の廃止、マイナンバーカードによるオンライン資格確認については、いくつか課題も残されています。
政府が推進している「医療DX令和ビジョン2030」において、重要な取り組みとされていることの1つに「電子カルテ情報の標準化」があり、全医療機関への普及を目指しています。
もう一つの重要な取り組みである「全国医療情報プラットフォーム」での情報共有・活用のためには、医療情報システムを標準的な形式のメッセージや標準とされるコードを用いて設計する必要があります。
そのため、検査・処方・病名など必要な標準コードから実装し、これまで各施設ごとに使用していたコードから変換する対応が求められるとのことです。
そもそも電子カルテを導入していない医療施設にとっては、紙カルテからの切り替えには多くの時間と労力がかかることが予想されます。
上記で見てきた内容のほか、医療・介護・福祉サービスに携わる方々にとって非常に関心の高い項目に、診療報酬等の改定があると思います。
それについては、下記のように記載されています。
「次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担の抑制の必要性を踏まえ、必要な対応を行う。」
この骨太方針2023は、6月中旬に閣議決定される予定です。
今後、このような施策に対応するにあたって、制度や設備などを見直したい医療・介護施設や薬局の経営者様、ぜひD&Mカンパニーへご相談ください。