ニュース

ホームニュース病院・診療所の相続・継承対策 その(2)開業医(個人経営)編

コラム病院・診療所の相続・継承対策 その(2)開業医(個人経営)編

2023.07.05

前回に引き続き、病院や診療所における相続・継承対策を見ていきたいと思います。
今回は、開業医(個人経営)の場合です。

開業医の事業承継とは

個人経営の医院を引き継ぐ場合、不動産や医療機器などの継承が行われても、各種許認可は改めて取る必要があり、法律上は新規開業と同じです。

例えば、クリニックの院長が自分の子どもに事業承継するケースでは、一旦「診療所廃止届」を管轄の保健所へ提出して閉院し、そのうえで承継する子どもが「診療所開設届」を提出する必要があります。

また、クリニックは一旦廃止することになるため、スタッフも一旦解雇となります。事業承継後も継続して勤務してもらうのであれば、新たに雇用契約を締結することになります。
事業主が変わるため、取引先などとの契約も引き継ぎはされず、必要であれば再度締結しなくてはいけません。

このような手続き面での煩雑さに加えて、クリニックの不動産や医療機器を、継承する子どもに譲渡または贈与もしくは相続する場合には、税金の支払いも必要となり、その額によっては事業承継後のクリニックの経営に影響を及ぼすことになります。

医療法人への移行

開業医の相続・事業承継の際には、上記のような手続きや税金の負担があることを考慮し、事前に医療法人化しておくという対策があります。
医療法人への移行といっても、手続き上はまず「医療法人を新しく設立」し、これまでの「個人経営のクリニックを廃止する」という2つのことが必要です。

前回ご紹介したように、平成19年(2007年)4月1日以降に新設する医療法人は「出資持分なし」しか認められていませんので、これから設立する場合はもれなく「出資持分のない医療法人」となります。

医療法人であれば、医院の資産は院長である医師個人のものではなくなるので、相続の対象から外れ、相続税の負担もなくなります。また事業承継する際も、理事長の変更をするのみで、スタッフの雇用や設備・医療機器などもそのまま引き継げますので、スムーズに進みます。

とは言え前述の通り、「個人経営から医療法人への移行」は新しいクリニックを開設することと同じです。手続きの煩雑さは個人事業のまま引き継いだ場合と大して変わらないとも言えます。

それでも、相続税対策に加えて、後述する第三者への事業譲渡(M&A)などを考えたときに、医療法人化を検討する価値はあるでしょう。

基金拠出型医療法人について

医療法人を新設する場合、現在は「出資持分なし」のみが認められていますが、持分のない社団医療法人には「基金拠出型」と「一般の社団法人」という2種類があります。

「基金」とは医療法人運営のために拠出された金銭や財産のことで、定款の定めるところにより医療法人が拠出者に対して拠出した金額を限度として返還義務を負うものです。

基金拠出型医療法人は、平成19年(2007年)4月1日の第5次医療法改正で「出資持分のある医療法人」に代わるものとして創設されました。
これまでの「出資持分」と「基金」の大きく違う点は、出資者による払戻し請求があったときです。出資持分の場合、払戻しの金額は時価評価した医療法人の資産×出資持分の割合になるのに対して、基金の場合、払戻しの金額は拠出した額面金額までとなります。

これにより、相続や贈与、譲渡が発生した際に巨額な税金が課せられて医療法人経営が立ち行かなくなるという事態が回避できます。

後継者が不在の場合

事業承継を行うには、何よりもまず後継者がいなくては話になりませんが、個人経営のクリニックに跡継ぎがいないという状況は年々増えているようです。
クリニックを引き継ぐには医師免許が必要ですし、親族の中に然るべき人がいない、もしくは医師免許を持っていても継ぐ意志のある親族がいないというケースにおいて、閉院せずにクリニックを継続させるさせるためには、親族以外の第三者への事業承継(M&A)という選択肢があります。

クリニックのM&Aには、医療業界に精通したコンサルティング会社のサポートが重要です。
開業医の先生で事業承継をお考えの方は、D&Mカンパニーにぜひご相談ください。

資金繰りのご相談や経営に関することなど
お気軽にお問い合わせください。

06-6202-8823 (平日8:45~17:45) フォームからのお問い合わせはこちら
ページトップへ