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コラム「国民皆保険制度」の歴史をひもといてみる

2023.10.13

今の日本では、誰もが「保険証」を持ち、必要な時に医療サービスを受けることができます。
生まれたときからこのような環境であったため、当たり前のように感じてしまう人も多いかもしれませんが、この「国民皆保険」という制度はとても有り難いものであって、これからも守り続けていくべきという考えに異を唱える人は少ないのではないでしょうか。

ですが最近では、「マイナ保険証」の普及を進めるために紙の健康保険証の廃止が予定されていたり、高齢化による医療費の増大や、人口が減少することで難しくなる保険料の確保など、いろいろな問題をはらんでおり、将来的に国民皆保険制度が崩壊してしまうのではないかと懸念されています。

現在直面している問題の克服につなげるためにも、日本の医療保険制度を理解することは重要だと考えます。
そのために医療保険制度の始まりから現在までの変遷を知ることは、その理解の助けになるのではないでしょうか。

今回は、日本の「国民皆保険」の歴史を振り返ってみたいと思います。

国民皆保険制度の成立は1961年

日本の健康保険の始まりは、1922年(大正11年)制定、1927年(昭和2年)施行の健康保険法にさかのぼります。
この法律によって、10人以上を雇用する企業(その後1934年に「5人以上を雇用する企業」に拡大)は、「健康保険組合」を通して従業員の健康保険を提供することが義務付けられました。こうして「職域(被用者)保険」がスタートします。

一方で、自営業の人等が対象の「地域保険」は1938年(昭和13年)に制定された国民健康保険法により、やっと実現への目処がついたようでしたが、国民健康保険事業は各自治体によって任意で運営されていたため、全国民へ普及するには程遠く、1956年時点では総人口の3分の1にあたる約3,000万人が加入していませんでした。

この状況の中、1958年にそれまでの国民健康保険法が改正、新たな国民健康保険法が制定されました。
これにより、全ての市町村において国民健康保険事業の実施が義務化され、職域(被用者)保険の被保険者・被扶養者以外の国民は、自分の住む市町村国保への強制加入が原則となりました。そして1961年、国民皆保険が達成されました。

自己負担額の変遷

現在、医療費の自己負担割合は、75歳以上で1割、70歳から74歳までと6歳(義務教育就学前)未満は2割、70歳未満と70歳以上でも現役並みの所得者は3割となっています。
今の自己負担割合となるまでには、幾度か変遷がありました。

まず職域(被用者)保険については、健康保険が導入された1927年当時、医療費は全額給付で保険加入者の自己負担はゼロでした。
初めは被保険者本人のみに給付されていましたが、1940年に加入者の家族などである被扶養者についても、5割負担で保険給付の対象となりました。

その後、1943年に被保険者に定額の自己負担が導入され、1984年には定率の1割負担となりました。
さらに1997年に2割、2003年に現在の3割負担へと引き上げられました。
被扶養者については、1973年に5割から3割に引き下げられ、1981年には入院に限り2割に引き下げられましたが、2003年に一律3割負担に引き上げられました。

一方、国民健康保険については、新しく国民健康保険法が制定された1958年当時、自己負担割合は5割でした。
1961年に世帯主が3割負担、1968年には世帯員も3割に引き下げられています。

高齢者の医療費制度

1973年、高齢者を対象とする老人医療費支給制度が創設されました。それによって70歳以上の医療費は全額公費で負担されることとなり、それまでの自己負担3割分がゼロになりました。

ですがその後、高齢者の医療費が著しく増加し、財源の持続可能性が危惧されるようになったことから、1982年に老人保健法が制定、老人保健制度が創設されます。
この法律が施行された1983年から、それまで無料だった高齢者の医療費は一部を患者が自己負担することとなりました。

そして、2008年に後期高齢者医療制度が創設されたことで老人保健制度は廃止されました。

まとめ

大まかではありますが、日本の医療保険制度の始まりから現在までを見てきました。
制度を維持するために、自己負担割合の引き上げが何度か行われてきましたし、それ以外にも複合的に対策が行われてきました。

世界に誇れる国民皆保険を守っていくためには、この先も様々な対策が必要になると思われます。
行政レベルでの施策も重要ですが、日頃からの健康管理など一人ひとりができることを行い、持続可能で安心できる制度を継続させましょう。

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