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コラム日本の医療制度のしくみ

2023.11.30

前回前々回と「国民皆保険制度」の始まりから、現在の健康保険の種類や保険料について見てきました。
今回は、実際に医療サービスを受ける場合や、その際のお金の動きなど、日本の医療制度のしくみについて確認していきたいと思います。

フリーアクセスという体制

日本では、けがをしたり、体調が悪いと感じたときには誰でも自由に医療機関を選び、受診することができます。この「フリーアクセス」というしくみを採用している先進国は珍しく、日本の医療制度の特徴であると言えます。

受診する医療機関を自分で選ぶことができるので、メリットも多いフリーアクセスですが、注意も必要です。

医療機関には、診療所から中小病院、大学病院などの大病院までさまざまな規模の施設があり、それぞれに期待される役割があります。
例えば診療所であれば、風邪やちょっとした腹痛、けがなどの軽い症状に幅広く対応しています。
ですが、フリーアクセスでは(適した行動とは言えないものの)日常的な体調不良でいきなり大病院へ行くことも可能です。

本来は高度な医療を必要とする人や救急患者への対応を行うべき大病院に、診療所等からの紹介状もなく受診する場合には、通常の診察料の他に特別料金を徴収されます。
特別料金は初診で7,000円以上かかりますし、この料金には健康保険は適用されず全額自己負担となります。
(ただし緊急の時など、やむを得ない事情で大病院を受診する場合には特別料金はかかりません。)

また、大病院には原則として紹介状をもった患者が予約した上で行くことが多いので、そこへいきなり行っても長い待ち時間の末、短い時間の診察しか受けられない場合もあります。

大切なお金と時間を割の合わないことに使うことなく、適切な医療を受けるためにも、身近に信頼できる診療所などのかかりつけ医を見つけておくことが望ましいでしょう。

医療費の自己負担は原則3割

診療所や病院で受けた医療サービスの対価として支払う「診療報酬」は、医療行為のひとつひとつに厚生労働大臣によって点数が定められていて、その合計から「1点=10円」として計算された金額となります。
この点数(公定価格)は、全国どこの医療機関でも共通です。同じ医療行為ならば、誰から受けても診療報酬の額は同じになります。

そして、その診療報酬のうち受診者が病院等の窓口で支払う自己負担分は3割のみで、残り7割は医療機関から保険者(国保や社保など保険事業を運営している組織)に請求します。

尚、3割負担となるのは70歳未満の人と、70歳以上で現役並みの所得のある人です。
一般・低所得の75歳以上は1割負担、70歳以上と6歳未満は2割負担となります。

また、医療機関や薬局でひと月に支払った医療費が一定額を超えた場合に、超えた分の医療費は還付される「高額療養費制度」があります。医療費の上限は、年齢や所得に応じて設定されています。
家計の負担が重くなりすぎることなく、誰もが安心して医療サービスを受けることができるようにするための制度です。

保険者に請求する医療費

前述したように、診療報酬のうち医療サービスを受けた本人が支払った分の残り(原則7割)は、その人が加入している健康保険の運営組織(保険者)に請求されます。
保険者は、請求された医療費をどのようにして支払っているのでしょうか。

保険とはそもそも、いざというときのために加入者が保険料を支払うことで資金を作っておき、病気等で医療を受けなければならなくなったときに、その資金から給付するしくみです。

保険制度が成り立つためには、加入者から集める保険料と、加入者が病気になってしまったときに支払う給付額とのバランスが取れている必要があります。
ですが、日本の国民医療費は増え続けており、医療保険においては収支のバランスが取れなくなっています。

そして、保険料でまかないきれない分の医療費は、税金で補填されています。
令和2(2020)年度 国民医療費の概況(厚生労働省)によると、2020年度の国民医療費の総額は42兆9,665億円で、その財源のうち、保険料は21兆2,641億円で医療費全体の49.5%、公費(税金)が16兆4,991億円で38.4%となっています。

つまり、日本では医療保険という社会保険方式を基本としつつも、国民皆保険を維持するために、患者の自己負担と税金の投入を組合わせることで医療費をまかなっています。

まとめ

日本の医療制度のしくみや、医療費について見てきましたが、誰でもいつでも平等に医療サービスを受けることができる優れたシステムであることを、改めて認識できたと思います。

ですが現在、医療制度および国民皆保険制度には複数の課題があり、その持続可能性が懸念されています。
それらの課題解決には制度のしくみそのものを改革する必要があるかもしれませんが、現在の医療制度を守るために、無駄な医療費の削減など、個人レベルでできることに取り組んでいきましょう。

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